大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和40年(少)1742号 決定 1965年3月05日

少年 N・S(昭二八・九・一六生)

主文

本件を大阪府池田児童相談所長に送致する。

同所長は、少年に対し通算一八〇日を限度として少年の行動の自由を制限する強制的措置をとることができる。

理由

少年は昭和三七年一一月一日怠学、家出浮浪、窃盗の事犯により、大阪府立修徳学院に入所したものであるが、昭和三九年三月一一日保護者(母)の家庭での監護態勢もととのつたので帰宅させて欲しい旨の申出がなされたことから少年を上記学院から退所させた。ところがその後少年の素行は改まることなく家出浮浪窃盗の非行を重ね、加えて保護者(母)に対して暴行などをなすに及び保護者(母)から大阪府池田児童相談所に少年の処置についての相談があつて後昭和三九年一二月一一日再度上記学院に収容するようになつた。しかるにその後少年は再三にわたつて無断外出を重ねその都度、豊中市附近を浮浪して空巣を重ねており、現状のもとでは少年に対する矯正教育の目的を達するためには少年の行動の自由を制限するところの強制的措置をとる必要がある。

として大阪府池田児童相談所長から児童福祉法第二七条の二に則り当裁判所に送致されてきたものである。

ところで、当裁判所の調査の結果によると、

一  少年は昭和三四年四月兵庫県尼崎市立○○小学校に入学をしたが、昭和三六年六月父母が離婚をしそのため少年は母方の祖母の家にあづけられることとなり、大阪府豊能郡○○町立○○○小学校に転入学をしたが、その頃から素行が悪くなり、そのため当時の少年の監護に当つていた祖母Y・U子、および、○○○小学校々長からの申し出により、昭和三七年一一月一日大阪府池田児童相談所長は児童福祉法の規定に基いて、少年の大阪府衛生会健康の里への入所措置をとり、以後上記健康の里に収容せられたが同所から再々にわたつて無断外出をなしたため結局大阪府池田児童相談所長において昭和三八年三月六日措置変更のため上記健康の里から少年を退所せしめたうえ新ためて少年を一時保護の後児童福祉法の規定に基き同年三月二五日大阪府修徳学院に入所措置をとり同日少年は修徳学院家庭寮に収容されたが昭和三九年三月一〇日保護者(母)から少年を引取りたい旨の申出があつたため、大阪府池田児童相談所長は同年三月一九日少年の外出許可という形で一応保護者(母)に少年を引渡し同月三一日児童福祉法施行規則に基き措置解除をしたということ。

二  ところが、昭和三九年一二月保護者(母)から少年を再度児童福祉施設へ収容して欲しい旨の強い要望もあつて、大阪府池田児童相談所長は児童福祉法の規定に基き、大阪府修徳学院に少年の入所措置をとつたが、少年は同学院から別表一掲記のとおりの無断外出を重ねその都度別表二掲記のような非行を重ねてきているということ。

三  少年の性格は自己中心的で、自己抑制に欠け、行動はややもすれば欲動的、感情的に流れ易く、且つ、攻撃的であるということ。

四  少年の各非行の動機は、少年の本質的な社会成熟度の低さ、劣等感、さらには、家庭における真の親和感の欠如等に由来する欲求不満を主たる原因とするもの-少年は審判廷において「人から受容れられたい。認められたい。今の自分は多くの人から見捨てられているのではないか。」という趣旨の供述をしている。-と考えられるということ。

上記諸事情を考えるとき、少年に対する適切な治療教育の目的を達するためには、少年の行動の自由を制限する強制的措置をとる必要が十分にあるものと認められるので本申請を許可することとし主文のとおり決定する。

(裁判官 重村知男)

別表一

回教

無断外出年月日

(昭和・年・月・日)

収容年月日

(昭和・年・月・日)

三九・一二・一八

四〇・一・七

四〇・一・一二

四〇・一・二八

四〇・二・一四

三九・一二・二一

四〇・一・一一

四〇・一・二二

四〇・二・一二

備考 昭和四〇年二月一八日当家庭裁判所において観護措置決定がなされた。

別表二

番号

共犯

触法年月日時

(昭和・年・月・日)

場所

被害者

被害物件

価格

四〇・一・○○正午頃

豊中市××町二丁目○○番被害者方

○田○和

現金一二、六四〇円

四〇・一・△△

午後八時頃

同市○○○町五丁目○○アパート被害者方

源○穣

自動車カバー一枚

四、〇〇〇円

同右

四〇・一・××

午後〇時頃

同市△△町丁目○○番地被害者方

○月○司

現金六、〇〇〇円

四〇・一・□□午前一一時二〇分頃

同市○○△町一丁目○○○番地被害者方

○森○蔵

現金四、〇〇〇円トランジスターラジオ一台外三点

五、三〇〇円

四〇・一・○×午後九時頃

二に同じ○○アパート被害者方

○田○子

自動車カバー一枚

四、〇〇〇円

四〇・一・○△午後三時四〇分頃

二に同じ○○アパート被害者方

○田△子

現金二一、〇〇〇円

腕時計五個

外五点

六、五五〇円

四〇・一・○□正午頃

二に同じ○○アパート被害者方

○川○子

カメラ一台外四点

八、七〇〇円

同右

四〇・一・○□午後五時三〇分頃

二に同じ○○アパート被害者方

○田○作

旅行用置時計一個

三、〇〇〇円

四〇・一・△○午後四時頃

豊中市××町二丁目被害者方

○田○夫

現金四、六三四円

一〇

四〇・一・△×午後一時頃

同市××町○○○番地被害者方

○橋○義

現金一、三五六円

一一

四〇・二・○午後一時頃

同市□□町一丁目被害者方

○野○一

現金一〇、〇〇〇円

一二

四〇・二・×午前一一時頃

同市□□町一丁目○○番地被害者方

谷○登

現金六、〇六〇円

一三

四〇・二・△午後三時頃

同市□□町一丁目被害者方

川○実

現金一、六〇〇円

一四

四〇・二・□午前一一時三〇分頃

同市××町二丁目被害者方

○越○計

現金三、〇〇〇円

一五

四〇・二・□午後三時頃

同市○○町三丁目被害者方

○村○七

現金三、〇〇〇円

一六

四〇・二・○○午前一一時五〇分頃

同市××町二丁目被害者方

○本○夫

現金五〇〇円

一七

四〇・二・○○午後〇時三〇分頃

同市○△町三丁目被害者方

○山○夫

現金五、三〇〇円

一八

四〇・二・○○午後一時頃

同市××町二丁目被害者方

○木○則

現金二、三〇〇円

一九

四〇・二・××午前一時頃

同市×××町四丁目被害者方前路上の車

○井○男

毛布一枚外一点

四、〇〇〇円

二〇

同右

四〇・二・××午前一時三〇分頃

同市×○町九番地被害者方

○下○○郎

自転車一台

一〇、〇〇〇円

二一

同右

四〇・二・××午前三時頃

同市×○町一丁目被害者方

○中○○ゑ

現金二、四〇〇円

二二

同右

四〇・二・××午後三時頃

同市△△△町四丁目被害者方

○総○夫

自転車一台

一五、〇〇〇円

二三

同右

四〇・二・××午後八時頃

同市□□□町三丁目○○番地先路上

○月○雄

自転車一台

二二、〇〇〇円

二四

同右

四〇・二・□□午前四時頃

同市×××町四丁目○○番地先路上の車

○井○子

布団一枚外一点

三、〇〇〇円

二五

四〇・二・△△午前一〇時三〇分頃

同市△△△町二丁目被害者方

○中○幸

現金四〇〇円

二六

四〇・二・△△午前一一時頃

同市×××町四丁目被害者方

○上○生

現金三〇〇円

二七

四〇・二・△△午前一一時三〇分頃

同市△△△町二丁目被害者方

○中○夫

現金二〇〇円

二八

四〇・二・一六

同市△△△町三丁目被害者方

水○勇

現金七、〇〇〇円

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例